もくじ
IT技術の向上やグローバル化の進んだ現代において、物流や経済の競争は激しさを増す一方。
その中で企業が生き残るためには、業務の効率化やコストの削減といった戦略的な経営が、必要不可欠なものとなっています。
そのためにはもちろん、社内で無駄を省いて業務を効率化することや、人事労務によるコスト削減が必要です。
しかし、「業務の効率化を試みているが結果がでない」「コスト削減によるデメリットで業績が下がった」といった悩みを抱えている企業も少なくないのではないでしょうか。
無計画なコスト削減はメリットではなく、デメリットの方が大きくなります。
そのため、闇雲にコストを削減するのではなく、メリットとデメリットを考えて戦略的にコストを「最適化」することが重要です。
このような考えのもとで、経営戦略において重要な手法のひとつに「アウトソーシング化」の考え方があります。
アウトソーシングとは外部資源という意味のアウトソースから来ている言葉で、「外の資源を利用する」、つまり「外部委託を行う」ことを意味します。
これらアウトソーシングは、専門性が高く自社内では遂行が難しかったりメリットが薄かったりする業務について広く行なわれていますが、それ以外の業務にも活用するメリットがあります。
社内の業務は、開発や戦略的営業といった自社でしか行なえないコア業務と、事務や人事労務、物流、倉庫管理といったノンコア業務に分けられますが、ここでは、そのノンコア業務を派遣会社など請負可能な他の企業へ外部委託するのです。
それでは、このようなアウトソーシングを行う上でのメリットとデメリットとは、具体的にはいったいどのようなものでしょうか。
まず、アウトソーシングを行なう1つ目のメリットは、人件費の変動費化により戦略的にコスト最適化が可能になる点です。
人件費は企業コストの中でも代表的な固定費であり、売上の変動に影響されないためコストに対する割合が多いと経営にデメリットとなり、またコストの削減も難しくなります。
そのため、人件費は経営戦略において重要な課題のひとつとなっているのです。
ここで、物流や倉庫業務などノンコア業務を外部委託することにより、固定費であった人件費を変動費である外注費として考えることができます。
こうすることで、繁忙期のように業務が増加したときには外部委託の量を増やし、業務が減少したときには外部委託の量も減らすといった、戦略的なコスト最適化が可能になるメリットとなるのです。
アウトソーシングを行なう2つ目のメリットは、コア業務の強化という経営戦略が可能となる点です。
戦略的な経営をするにあたって、売上を上げるためには業績にメリットのある開発や営業などのコア業務に人材を注力し、企業をより発展させるという経営戦略を取りたいと考えます。
しかしながら、一方で事務や人事労務といったノンコア業務も企業の経営や維持に必要な業務であるため、おろそかにすればデメリットが大きく、一定の人材を割くことが必要です。
そこでアウトソーシングを活用しノンコア業務を外部委託することで、ノンコア業務に割いていた人材をコア業務に注力させることができます。
このようにアウトソーシングすることによってノンコア業務を効率化することは、コストの面でも生産性の面でも大きなメリットとなります。
アウトソーシングを行なう3つ目のメリットは、業務の効率化と質の向上です。
アウトソーシングを取り扱う企業の多くは、その業務に従事できる十分な知識や専門性をもった人員を揃えています。
そのため、自社内でそのノンコア事業を行なうよりも外部委託を行なったほうが、業務が効率化するというメリットや、業務品質が向上するといったメリットが得られることも少なくありません。
また、納期がある業務については納期通りに安定した品質で納品されるため、経営戦略どおりに進めやすくなります。
さらに、アウトソーシングにおいて教育は外部委託先が行なうため、自社でアルバイトや社員を雇用したときのように教育をする必要がなく、人事労務における採用・育成コストを減らせるといったメリットもあります。
人事労務管理もアウトソーシング先で行なわれるため、人事労務の管理がしやすくなるという点もメリットです。
このようにアウトソーシングを活用することで、自社でしかできないコア業務に注力して生産性を上げたり、業務をより効率化してコストを最適化させたりといったメリットを得ることができるのです。
では、それに対してアウトソーシングによるデメリットにはどのようなものがあるでしょうか。
アウトソーシングにおける1つ目のデメリットは、業務指示が煩雑になることがあるという点です。
例えば、今まで社内で行なってきた事務や人事労務、物流、倉庫業務などのノンコア業務をアウトソーシングするにあたっては、その業務をアウトソーシング先に引き継がなくてはなりません。
しかし、社員間の共有だけで社内に明確な業務プロセスがない場合は、指示書としてそれを作成しなければならないデメリットがあります。
ただし、このデメリットは普段から社内に明確な業務プロセスを作成しておくことでなくすことができます。
業務指示を口頭だけでなくきちんと書式化しておくことは企業においてもメリットのあることですので、アウトソーシングへのデメリットに対してだけではなく日頃から意識して行なっておくことが戦略的な企業としても重要です。
アウトソーシングにおける2つ目のデメリットは、社内にノウハウが育たなくなる点です。
効率化を重視して業務をアウトソーシングに任せきりにしすぎると、社内でその業務についてのノウハウが育たず、アウトソーシングを終了したくなったときに社内業務へ戻しづらくなってしまいます。
この場合、ノウハウについて外部委託先から学んだり、自社雇用の社員を業務に参加させたりすることにより、このデメリットを軽減することができます。
アウトソーシングにおける3つ目のデメリットは、外部委託であるため管理が難しい点です。
自社内で行なわれる業務であれば目が行き届くため管理することは簡単ですが、アウトソーシングでは外部委託先でどのように業務が進められているかを把握することが難しくなるというデメリットがあります。
アウトソーシングにおける指示系統は外部委託先にあるため、社内業務のように企業側から指示が直接できない点も注意が必要です。
そのため、質の悪いアウトソーシング先の不備で業務の品質低下や情報漏えい、自社ノウハウの流出といったデメリットをこうむってしまう例は少なくありません。
このようなデメリットを避けるためには、まず信頼のおけるアウトソーシング先に外部委託することが非常に重要です。
業務の進捗報告や品質の管理がしっかりしており、また責任範囲や情報の取扱いに関してしっかりと契約が結べるようなアウトソーシング先であれば、これらのデメリットを避けることができます。
このように、アウトソーシングにはメリットだけでなくデメリットも少なくありませんが、外部委託するにあたってそれぞれ対策を行なうことで、デメリットを軽減することが可能となります。
さて、自社雇用の社員以外に業務を行なってもらう経営戦略の手法として、アウトソーシングの他に派遣スタッフを使う方法があります。
しかし、派遣とアウトソーシングの両方を取り扱う派遣会社も存在するため、「派遣とアウトソーシングの違いがわからない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
アウトソーシングと派遣の違いや、それぞれを使う上でのメリットやデメリットは一体どのようなものでしょうか。
まず大きな違いとして、アウトソーシングが事務や倉庫管理といった業務自体を他の企業へ外部委託するのに対し、派遣では派遣会社から企業へ人員が派遣され、その企業内で事務や倉庫管理の業務に従事するという違いがあります。
そのため、指揮系統が外部委託先にあるアウトソーシングと違い、派遣スタッフの指揮系統は派遣先の企業になるという違いがあります。
このことから、企業から直接指示できないデメリットがあるアウトソーシングと違い、派遣では企業から直接指示をすることができる点がメリットです。
一方で、派遣では業務における細かい指示を行なう必要のあるデメリットがあるのに対し、アウトソーシングでは外部委託先がそれらを行なうため手間がかからないというメリットがあります。
また、アウトソーシングと派遣では仕事内容に制限があるかないかという違いがあります。
外部委託の場合はそこで働くスタッフは自社社員であるため、事故などに対して責任範囲を問われることはありませんが、一方で、派遣では派遣スタッフを派遣会社から「借りている」ため、事故などがあった場合責任範囲が問われるというデメリットが生じます。
そのため外部委託には仕事内容の制限がないのに対し、派遣においては、港湾運送業務、建設業務、警備業務といった危険が伴う仕事に派遣スタッフを従事させることが禁止されているというデメリットがあります。
また、派遣には同じ会社に対する派遣期間が最長で3年であるなど、派遣期間についての制限があるという違いにも注意が必要です。
このように、アウトソーシングと派遣では指示系統や仕事内容の違いから、使用する上でそれぞれメリットやデメリットがあります。
実際のコストとこれらのメリットやデメリットを比較しながら戦略的に、業務に合った手法を使うことが重要です。
では、これらのアウトソーシングを活かして業務効率化とコスト最適化というメリットを得るにあたり、どのような活用例があるでしょうか。
以下に外部委託のメリットを活かした2つのケースを示します。
ケース1)ハイブリッドアウトソーシングによる効率化とコスト削減
物流倉庫の在庫管理や物流倉庫からの出荷作業といった物流倉庫管理の業務は、ノンコア業務でありながら物流という企業に欠かせない重要な業務です。
しかし、季節物を扱う物流倉庫などでは、倉庫管理は繁忙期とそうでない時期とで業務量が異なり、業務効率化や人件費のコスト削減が難しいというデメリットがあります。
このような物流倉庫などでコスト最適化に有効なのが「ハイブリッドアウトソーシング」といった、アウトソーシングを用いた方法です。
これは、物流倉庫業務の作業員として派遣スタッフやアルバイトを用いるのではなく、物流倉庫での倉庫管理そのものを派遣も請負も可能な派遣会社へアウトソーシングし、その外部委託された派遣会社の常駐管理者が業務量に応じた人員調整により物流倉庫管理や発送代行を行なうというものです。
このハイブリッドアウトソーシングという手法のメリットは、外部委託により物流倉庫管理を行なっていた正社員をコア事業に注力させることができる点はもちろん、外部委託先が「スポット人員の動員も得意とする派遣会社」であることによる人員調整と業務の効率化と、この効率化による派遣コスト最適化が可能な点です。
このように、物流倉庫業務をはじめとするノンコア業務に派遣だけでなく外部委託のメリットを活用することにより、より効率化しコスト削減を行なうことが可能となります。
ケース2)自治体における外部委託業務
地方自治法改正による地方分権の動きを受け、近年、自治体においてもコスト削減や業務効率化がより重要視されるようになりました。
それに伴い民間委託という形で、自治体の業務がアウトソーシングされることも非常に多くなっています。
自治体業務に外部委託を活用するメリットとして、自治体の行政プロジェクトをまるごと民間委託して外部委託先に企画や運営を任せることで、自治体側が様々な手間を省き効率化できる点があります。
また、自治体のプロジェクトに民間からの視点や手法を取り入れることができる点も、自治体にとって大きなメリットです。
特にイベントの窓口業務やアンケート調査といった人員が必要な自治体のプロジェクトについてはスポット人員の動員が得意な、派遣も請負も可能な派遣会社へのアウトソーシングが適しています。
ただし、自治体が外部委託をするにあたり、企画力や運営力のない派遣会社では逆に自治体側の手間が増えるというデメリットになりかねないため、しっかりと外部委託先を確かめ、自治体プロジェクトの実績があるなど信頼のおける派遣会社に依頼することが重要です。
最後にアウトソーシングのメリットを活用するために注意すべき点を2つご紹介します。
アウトソーシングするにあたって1つ目の注意点は、しっかりと契約を確認し責任範囲を確認しておくことです。
外部委託では、業務は企業からの指示ではなく外部委託先の指示で行なわれますので、任せきりにしてしまうとデメリットで述べたように業務の管理が難しくなることがあります。
また、万が一トラブルや事故が起こった場合の責任範囲や所在を明確にしていないと、外部委託先とのトラブルになりかねません。
そのようなデメリットを起こさないためには、外部委託先との契約のときにしっかり業務内容や納期、またトラブルや事故が起こった場合の責任範囲などを取り決めておくことが重要です。
また、アウトソーシングを継続する場合にはそのたびに契約を見直し、双方にデメリットのない業務を行なわなければなりません。
アウトソーシングするにあたって2つ目の注意点は、偽装請負となっていないかどうか注意することです。
偽装請負とは外部委託として企業から業務を請け負いながら、業務の実態が派遣である場合のことで、責任範囲が曖昧になることや労働者に違法な労働条件になりやすいといった労働者に対するデメリットがあるため禁止されています。
メリットやデメリットの項目でも述べたように、アウトソーシングでは企業側から業務指示を行なうことができません。
そのため、もし外部委託先が業務指示を企業に任せてきたりするような場合は偽装請負を行なっている派遣会社である危険性があります。
このような偽装請負に巻き込まれないためにも、外部委託の際は信頼のおける派遣会社を利用することが重要です。
このように、アウトソーシングはさまざまなメリットやデメリットがありますが、それを理解した上で活用することで、業務を効率化して生産性を上げ、さらにコスト最適化を実現することができます。
そのためには、外部委託がデメリットにならないよう注意点に気をつけ、信頼のおける外部委託先に依頼することが大切です。